先程の、ラジオを聴いてくださった皆さん、ありがとうございました。
約束の通り、TAKAさんとMASATOさんによる、
defspiralの1stアルバム『PROGRESS』の全曲インタビューをお届けします。

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defspiralとして始動して1年ちょっと。
満を持して、1stアルバム『PROGRESS』(10月26日発売)が完成した。
メンバー4人が一緒に音を出すようになってから10余年経つというのに、
初期衝動のようなエネルギーが感じられる、
正に“1stアルバム”と呼ぶにふさわしい仕上がり。
TAKAとMASATOに1曲ずつ丁寧に話を伺う中で、
この作品への熱い想いが見えてきた。



defspiral_progress




M1「SALVAGE」
ーー“SALVAGE”は“遭難した船から人や荷物を救助する”という意味ですよね。
TAKA:元々、言葉には救助って意味があるんですけど、最近ではIT用語として“消失したデータを救出する”って時にも使うみたいなんですね。元々、俺が“SALVAGE”って言葉を知ったのは『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、エヴァ)なんですけど(笑)。碇シンジがエヴァに吸収されてしまった時の救出作戦の名前が“サルベージ”っていう名前だったんです。だからエヴァ好きな人は、この曲タイトルを聞いて、アレかな?って思うかもしれないっていう。
MASATO:あ、そうなんや(笑)。まさか、ここでシンジくんの話が出てくるとは思わなかったな(笑)。
TAKA:ま、救出っていうところから派生して、自分の中に眠っているモノをもう一度掘り起こす、忘れてしまってるものを取り戻すとか、そういうテーマで書いてますね。1曲目にふさわしいテーマになったかなって思うんですけど。
ーーですね。リフでぐいぐい押していく激しい曲調も含めて。
MASATO:ヘヴィーかつメロディーが立っているパターンの曲調は元々、俺らが得意とする感じですね。この曲はライブでオーディエンスが手を挙げるところや、頭を振るところをスゴく意識しています。あと、TAKAがシャウトするところがほしいなって思って作りました。
ーー先日のライヴで演奏してみて、MASATOさんの思っていた通りにオーディエンスは反応してました?
MASATO:そうですね。みんな動いてましたよ、初めてフルで聴く曲なのに。
ーーそんな勢いのある曲なんですけど、♪声を聞かせて♪ってところで静まったりするっていう。
TAKA:攻めるだけじゃなくてハッとさせるポイントも作ってますね。
MASATO:その対比も面白いと思うんですよ。
ーー原曲から、こんな感じだったんですか?
TAKA:元々、シャウトとメイン・ボーカルとコーラスとが入っていたんですけど、さらに足していったっていう。
MASATO:俺の予想以上に掛け合いが出来たなって思いますね。やっぱりデモで合いの手のシャウトまでは入れられないから(笑)。
TAKA:家にデモを送ってもらったものに、歌を入れてシャウトを入れて、入れられるだけ入れてデータを返したんで。ライヴではコーラスで入ってるパートとかをみんな歌って、一緒にやろうぜ! 一緒に盛り上げようぜ! 一緒に曲を作り上げようぜ!って気分ですね。


M2「READY OR NOT」
ーーラジオでも言ったけど、こういうアメリカン・ロック・テイストの要素、これまで皆さんの楽曲に実はなかったですよね?
MASATO:そうっすね(笑)。ちょっと意識しましたね。
TAKA:カラッとした空気感を。
ーー歌メロに絡んでいくギターもいい感じだし。
MASATO:はいはい。こういうアプローチは今までしてなかったんで、ちょっといつもとは違う方向でアプローチしてみようと思って。
ーーその辺はスッゴく新鮮なんですけど、デジタルの音、リフで持って行く感じは正にdefspiral。
TAKA:ザックザクいきますね。イントロとアウトロにシンセのシーケンスが入るんですけども、実は省こうか?っていう声もあったんです。けど俺は緊張感のあるフレーズが、描きたい時代の空気感ともリンクするなと思ったんで、この曲のカラーとして残しました。
ーーメジャーとマイナーが交互に出てきてサビに向かってどんどん広がるっていう、そんなところも面白い。
TAKA:それも含めてRYOらしい曲だなって思います。サビへ向かって開けていく感じは、混沌とした中で目覚め、覚醒しようっていう歌詞の内容ともリンクさせられたかな、と。1曲目から引き続き、“新しい世界が始まるぞ、用意はいいかい?”っていう曲です。


M3「トワイライト」
ーーアルバムではリミックスしてますか?
MASATO:リミックスしてますね。
TAKA:まずはドラムの音から変えていって。
ーー音のバランスだけじゃなくて?
MASATO:完全に違いますね、音自体が。
TAKA:新録した曲に音を揃えるっていう意味もありますけど、1回リリースしてからライヴとかを経てきて、自分達の中でもいろいろと印象が変わってきて。もっとこうしたいって思うところを変えたんです。
MASATO:中でも一番変わったのはドラムですよね。アルバムのトータル・バランスを考えて、今回はより生っぽい感じで全部リミックスしてます。サウンド面ではより派手になってますね。
ーー疾走感と大きいうねりとが繰り返される、TAKAさんらしいヴォーカルの良さが出る1曲ですよね。しかも改めてクレジットを見てみると、defspiralがこれまでリリースされたマキシ・シングルはTAKAさんの作詞作曲が多いんですよ。
MASATO:燃えていたから、あの頃は(笑)。
TAKA:今は枯れちまって…(笑)。
ーーえ、枯れちゃったんですか?(笑)
TAKA:いやいや(笑)。俺の曲が多かったのは、たまたまですよ。
ーーそうかなぁ。TAKAさんが(作詞作曲に)燃えているって噂、実は他からも聞いてましたよ。
TAKA:ホントですか? 最近?
ーーdefspiralとしてスタートした当時。
TAKA:ま、燃えてましたよ、当時は。あとはMASATOに任せた(笑)。
MASATO:火種がコッチに飛んで来て、今、俺が燃えてます(笑)。
TAKA:あとはラクさせてもらうわ(笑)。


M4「DIVE INTO THE MIRROR」
ーーdefspiralきっかけの曲ですね。
TAKA:そうですね、defspiral始動の曲、とても大切な曲です。
MASATO:これもリミックス・ヴァージョンですね。やっぱり一番ドラムの音が変わってるんですよ。
TAKA:シングルの時は生っぽくなかったんだよね。
MASATO:そうやな。どちらかというと打ち込みに聞こえるような作り方をしてたから。あと、今まで聞こえてなかったループもののヴォリュームを上げてシンセ関係のバランスを変えたことで、ちょっと印象が変わってきたんじゃないかな?と思います。


M5「PARADISE」
ーー初めて聴いた時、チープな音から始まって、あれ、大丈夫?って思っちゃいました(笑)。
MASATO:(笑)俺自身も、この曲を作った時に“これ大丈夫かな?”って思いました(笑)。それくらい、冒険をしようと思って作ったんですね。だからメンバーに聴かせる時も“ちょっとこの曲、変わってるけど、どうかな?”って感じで、おっかなびっくり聴かせたっていう(笑)。
TAKA:でも、これは聴いた瞬間、食いついちゃいましたね、俺は。
MASATO:食いついてましたね、かなり(笑)。
ーー元からこういう雰囲気?
TAKA:ま、ほとんど骨組みは出来てはいたんです。チープなカッティングのギターから始まってBメロで轟音のギターに突入して、サビはダンサブルっていう構成は出来ていたんですけど、何かもうひとつ色がほしいなっていうのがあって。で、プリプロで合わせていく中で、ロック的なロックンロール的な要素とかパーティー的な要素とか、みんなで騒いでいる感じとが、どんどん加味されていって。
ーーそれで“踊ろう”っていう言葉も出てきた?
TAKA:そうですね。そっちの方向だな、と思って。そこからどんどん音は増えていったんですね。ギターとかコーラスの♪whoo whoo whoo♪もそうですし。賑やかな感じを出したくて。
MASATO:♪whoo whoo whoo♪とか、そういうのは元々の作曲段階ではまったく考えてなくて。あれはTAKAが色を付けてくれたんです。
TAKA:リハスタで1人2役で♪whoo whoo whoo♪って言いながらメインも歌って(笑)。俺の中にはコーラスを追いかけるヴォーカルっていうのがあったから、メンバーに“ちょっと、こんな感じで歌ってみて?”って歌ってもらって仕上げていって。で作ってる途中で“これはロック的なエロい歌になるな”っていうのは確信していたから、歌詞もその方向で詰めていったんですね。 あとはRYOがリフに被ってくるダンサブルなシンセフレーズを入れてきたり、どんどん色がついてって。みんなで世界観を作っていった感じはありますね。
ーー歌詞は欲望のままにいっちゃおうって感じですか?
TAKA:後半のサビに出てくるフレーズなんですけど、“一度きりの花を狂い咲かせよう”と。ま、捉えようによっちゃ、一晩だけのそういう関係みたいなものにもとれるんですけど(笑)、それだけじゃなくて、欲望のままに生きようっていうことですね。エデンを追われたアダムとイブが描かれた『創世記』の一節をちょっと引用して。彼らはエデンを追放されてしまったんですけど、そういう獣だよ、俺たちはっていう。
ーーけれど、それこそが“PARADISE”なんだ、と。
TAKA:そう。それを楽しんで生きていこうぜ、みたいな。ただし今を“PARADISE”にするのは自分自身だよって。
ーーうんうん。こういう歌詞があっての色っぽい音のギター・ソロ?
MASATO:歌詞よりも音作りは先だったんですよ、実は。でも、歌詞の雰囲気はわかっていたんで。
TAKA:リハスタで合わせている時に色気のある雰囲気とか、あるといいなって言ってたよな。
MASATO:うん。今、あらためて聴くと、ギター・ソロ、シブっ!って思います(笑)。
ーーなんか'90年代初頭に流行ったマンチェスター・サウンドのエッセンスも入ってますよね。
TAKA:ああ、バンドが演奏するダンス・ミュージック、クラブのそういう感じは出てると思いますね。プラス現代的なギター・サウンド、リフとかも入り乱れていて面白いし。サウンドの要素が入り乱れてる感じが、歌詞の世界観に繋がってるなと思いますね。ま、そんな世界観から一夜明けたら現実世界に戻る、っていう。
MASATO:そのニュアンスが前後のチープな音で出ているんじゃないかな、と。
TAKA:この曲の世界はちゃんとひとつの世界として、ひとつの部屋として存在している感じに見えるんじゃないか、と。


M6「RESISTANCE」
ーー“defspiralがプログレ?”って思いますよね、イントロが流れてきた瞬間は。
MASATO:(笑)そうそう、ゲッと思わせる始まり方をしようという意図があって。だけど、この曲はファンクの要素を入れたくて、ベースもスラップやってよ、みたいな注文をRYOに出したりして。
ーー間奏で。
MASATO:そうそう。
ーーあと、ワウを使ったリフも、正にファンク。
TAKA:新鮮ですよね。
MASATO:これまでも、ちょこちょこ使ってはいたんですけど、ああいう使い方は今までしてなかったんで。髭生やしてレスポールを弾いてる感じの雰囲気っていうか(笑)。
ーーなんかディレイのかけ方も古い感じなんですよ。それでラジオでも'70年代ってキーワードが出てしまったんですけど。
MASATO:かもしれないですね。フレーズがそういう感じなんで、どうしてもディレイのかけかたも、そういうのにしたくなってしまうっていう。
TAKA:髭MASATOですね(笑)。
MASATO:完全に髭(が生えてる感じ)です。
TAKA:カッコいいですよ。ライヴで見てても、新鮮だし。間奏はヘッドホンで聴いてもらうと楽しいと思うんです。左からベース、右からギター、真ん中からドラムが聞こえてきて。アレンジ自体もそうなんですけど、特に間奏は3人でジャムってるみたいな空気があって面白いなじゃいかなって。
ーーうん。そんな髭な感じはあるんですけど(笑)、サビはキャッチーで心を捕まれるんですよね。
TAKA:スッゴくいいメロ。好きですね。
ーーで歌詞なんですが、何かに対して立ち向かうという感じ?
TAKA:歌詞自体、物語の一部を切り取ったみたいな感じなんですけど。レジスタンスといっても立ち向かう対象は特定の体制や組織的なものではなくて、困難に立ち向かうみたいな感じっていうか。主人公のヒーローとヒロインが手を取り合って困難に立ち向かって突き進むって感じですね。
ーーなるほど。その中で、スゴくTAKAさんらしい表現かなって思ったのは、♪革命の夜明けが繋いだ手の平で始まる♪っていう部分。今の時代にもマッチしてるし、そうだな、革命はそこから始まるんだよなって思ったんですよ。
TAKA:そうですね。時代を動かすような大きなことに限らず、(人と人とが)心を通わせることで、ひとつの大きな力が生まれるっていうことはテーマですね、うん。


※インタビュー【2/2】へ続く。