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お待たせしました!

7月5日、“333music.wave”にゲスト出演してくださった人時さんの、
初のアコースティック・アルバム『ちっぽけな僕の世界』
日を明けて今日発売になりました。

ということで、ラジオで告知しましたとおり、人時さんのアルバム全曲インタビュー【前編】をお届けします


☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆

『ちっぽけな僕の世界』を初めて聴いた時、ドキッとした。
もし歌詞に書かれたことが実話なら、赤裸々すぎる問題作じゃないか、と。
失礼を重々承知の上でインタビュー中、思ったことをぶつけてみると、
“僕、バカ正直なんで…”と照れ笑いする人時氏。
けれど、彼が若い頃は、こんな歌詞は書けなかっただろう。
というより、周りの人間が阻止したに違いない。
音楽業界の第一線で活躍するアーティストにとって、
あまりにも生々しく、ある種のリスクをはらむ内容だから。
それを堂々と歌い自分が生きる世界を“ちっぽけ”だと言い切れる人時氏は、
逆にデッカい人間なんだと思う。
そんな人時氏のカッコ良さ、カッコ悪さ、すべてが詰め込まれた
『ちっぽけな僕の世界』。
1曲1曲ていねいに話を訊いてみた。



M1「ちっぽけな僕の世界」
ーーCDをかけると歌に入る前に口笛が聞こえてきて、そこで肩の力がふっと抜ける感じがするんですよね。
人時:ああ、そうですか。
ーーやっぱり初めてのCDをプレイヤーに入れた時って構えるじゃないですか?
人時:そうですよね(笑)。
ーーしかもベーシスト・人時さんの初のアコースティック・アルバムってことで、より構えるんですけど、あの口笛を聴いた時に、力を抜いてリラックスして聴いていい作品なんだと思えるっていう。
人時:ああ、なるほど。それは意識したというか。リラックスできるアルバム、聴いていて心地よく、そのまま寝てくれてもいいよ、くらいの気持ちで作りましたね。
ーーあの口笛は人時さんが?
人時:Death-Oくん(Dummy's Corporation、aki the BAND)。吹いてって頼んだら吹いてくれて。しかも結構、得意げに(笑)。
ーーどや顔で(笑)。
人時:そう(笑)。あとはパーカッション、ウインドチャイムでも参加してくれてます。他にゲスト・ミュージシャンでSHIGEさん(ex.ROBOTS)がギターを弾いてくれたり。それが気持ちよくハマりましたね。一番最初の目標は、アルバムのレコーディングは自分1人でやることだったんですね、すべてを。
ーーマルチ・プレイヤーのように。
人時:マルチというか、やれるだけ自分の力で出来るすべてをやる、なるべく生を意識するっていうのがコンセプトだったんですね。でもやっぱり、もっと音楽の世界観を広げたくて、高円寺でよくやっているアコースティック・ライヴに何度も参加してくれてるDeath-Oくんと、ROBOTSで一緒にやっていて今も交流のあるギターのSHIGEさんに声をかけて。Death-Oくんは自分のアコースティックの主旨も解ってくれてるし、SHIGEさんもアコースティックに対してスゴい興味を持っている人だし、僕のアコースティック・ライヴを何度も見に来てくれてるし。
ーーそれは心強いメンバーですね。
人時:はい。それで“やっていただけませんか?”と声を掛けたら“ああ、いいね”と快く参加してくれて。結果的に仲間で作った曲になりましたね。
ーー本作のタイトルでもあるこの曲に込めた想いは?
人時:先日のラジオでも言ったように、周りの友達や知人が亡くなっていく中で、自分てちっちゃいな…と思うところがあって書いた歌詞なんですね。ホントに、ちっぽけだと思いますから。
ーーそうですか?
人時:ちっちゃいですよ(笑)。そんな自分の住むちっぽけな世界を、それぞれが大事にして思いやっていけば平和になるじゃないけど、みんな“Win×Win”でいいんじゃないかなって。そこを目指すというか、そう考えられればいいかな、と。やっぱり世界規模で考えれば、微々たる世界ですから、僕の世界なんて。
ーー確かに人間なんてちっぽけかもしれないですね。自分の生きている時間も、世界の広さも。
人時:そうなんです、うん。そういうのを一応、考えて歌ってます、この曲では。


M2「始まりの声」
ーーもし間違っていたらアーティストに対して暴言を吐くことになってしまうんですが(笑)、この曲は子供が生まれた時のこと?
人時:その通り、まさしくソレです。何ていうのかな…自分にとって人生最大の衝撃的な事件というか事象、出来事の中で、自分の人生や価値観までも変えさせてくれたスゴく大きな出来事だったんですね、子供が生まれたことは。僕は子供が2人いるんですけど、1人目は(出産に)立ち会っていて。その時のことを思い出して書いてみたんです。
ーーっていうと、随分前のこと?
人時:もう10数年前の話。
ーーそれが今、歌詞にできてしまうというのは、よほど強烈な出来事だったんですね。
人時:そうですね。やっぱり今でも思い出しますし。それが良いか悪いか?は解らないけれど、結果的に価値観を変えてくれた、自分にとって間違えてない、と確信できる出来事だったので。変な話、自分の責任の下で自分のDNAが受け継がれたわけじゃないですか。
ーーええ。
人時:自分の血が絶えずに受け継がれたっていう行為は、ある意味、動物としての役割を果たしたことだと思うし。この事象が僕の人生にとってやっぱり大きな嬉しいことで、と同時に自分勝手でやっていることだからこそ新しい命を守らなければならない、とも思うし。(生まれてきた子供に対して)勝手にやってくれと野放しにしてはいけない。自分達の責任の下で子供達がちゃんと自分達で生活できるレベルに絶対しなければいけない。これは何が何でも死守しなければいけないことだ、と奮い立たせてくれたことだったんですね。その時の気持ちを形にしておきたいなっていう気持ちが強くて。ホント、思ったまんまの歌詞。特別、化粧も施してないし、聴いた通りの言葉です。
ーーなかなかここまでストレートに書かれた歌詞もないですよね、しかもかなりプライベートでの感情だし。
人時:バカ正直なんで(笑)。僕ね、一度書いた歌詞をちょこちょ書き直すとか、あんまりできないんです、元々がプレイヤーだから。歌詞に関して、そこまで文章的な技術とか解らないので、思ったことをまとめるくらいしかできない。それで、自分のことがまんま出た感じですかね。
ーー歌詞にまんまのご自身が出ているように、曲でもベースが最後の頃に目立って“らしい”ですよね。
人時:ベースで遊びましたね、はい。ホントはベースは入れたくなかったんです、正直な話。でも、プロデューサーの意向もあり、たまたまアコースティック・ベースも持っていたので。
ーーたまたまって(笑)。ベーシストなんですから。
人時:いやでも録音では使ったことなかったんです、今までは。だけど、自分はベーシストとして認知度が高いと思うので“ベースを入れてみましょう”と言われまして。今回のレコーディングでは、ミックスの感じもローファイというか古い感じというか、何て言ったらいいかな……ビートルズの頃の多重録音を意識しました。


M3「ほほえみ」
ーー勢いづきますよね、この曲で。
人時:アップテンポですからね。
ーー曲調はアグレッシヴですけど、歌詞はちょっとネガティヴ?
人時:実はこれ、歌詞だけ古いんですよ。何年前だろう……7、8年、いや9年、10年前かな……。
ーーどこまで遡るんですか(笑)。
人時:(笑)いや、作った時の記憶が薄れるくらいスゴく古い歌詞で。あ、そうか、初めてのアコースティック・ライヴで一番最初に演奏したのがこの曲かもしれないです。
ーーある種、人時さんのアコースティック・ライヴの原点?
人時:に近いかも知れないです。だから、この曲だけ歌詞の内容が違うんですよ。これが唯一のラヴソング。大事な人と一緒にいたいストレートな気持ちを綴ったっていう。黒夢でデビューした頃のことですけど、俺に限らず音楽関係では“女性はタブー”とされてたじゃないですか。
ーー表向きには。
人時:表向きには(笑)。特にお化粧してるバンドとか、いわゆる人気商売でやってる人達って、やっぱりこう、女性NGじゃないですか、基本今でも。実際にあったとしても、なかなか表に出せない。けれど当時、子供もいたし結婚してたから…。それを言えないし、言っちゃだめな状況もあったりして。おまけにスゴく忙しい時はプライベートがまったくない。そこでの(家族に対する)申し訳ない気落ちや罪悪感、音楽活動とプライベートの狭間での揺れ動く心情を書いてます。あんまり歌詞に関して詳しく語ると生々しくなっちゃうんでボカしてほしいんですけど(笑)。
ーーはい(笑)。
人時:だから、この曲は歌っていてちょっと恥ずかしい感じ(笑)。
ーーまぁ、ミュージシャンとはいえ、ひとりの男性でもあるわけですからね。で、メロディーもとの時のままですか?
人時:この曲は、ほぼ当時と一緒ですね。多少、コードは整理しました、綺麗でも物悲しく切なく聞こえるように。


M4「蜃気楼」
ーー裏切りと嘘によって失った恋の話でしょうか?
人時:なんでしょう……ま、歌詞の通りなんですけど。突き通した嘘は本当になるっていうことですね。そこが一番言いたかったことというか。何か悲しいというか。自分が綺麗なままにしておきたかったものが、自分の手を離れたところで汚されていく感じがスゴくイヤだった時があって。それが歌詞のメインです。ホントはこうなのに、周りはそう思ってないし認めてくれないし、その気持ちも言いたいのに言えないという苦しい状況、やるせなさ、ですか。
ーーうーん、具体的じゃないけれど、なんとなく解るような。
人時:まぁ実際にあったことなんで。僕の場合、作り話はほとんどないんで(笑)。
ーー(笑)。
人時:言いたいこと、すべて言ってるんですよ、この曲では。
ーーその苦しさを表してるかのようにコードも不安げですもんね。
人時:敢えて不安定なコードは使ってます。スゴく不思議な響きに聞こえるところもあると思いますよ、そこでも不安定な自分を表してるかな、と。


M5「大人以上大人未満。」
ーー面白いタイトルですよね。大人なんだけど大人になれてない、みたいな感じで。
人時:これはもう、音を聴いていても大人げないなって感じを意識しました(笑)。アコースティックというわりに何で音が歪んでいるんだ?って話もあるんですけど。
ーー(笑)。
人時:エンジニアさんに大反対されましたけど、押し切って(笑)。その辺も大人げないっていう(笑)。今回は全曲、日本語のタイトルにしてるんですが、この曲は元々、英語のタイトルだったんですね。歌詞も英語は避けていたんだけど、この曲は唯一、1行だけ入れてます。何か日本語だと上手くニュアンスが伝わらなくて。で、タイトルの「大人以上大人未満。」っていうのは、思春期の頃のことだと思ってもらえれば。その頃って“いい加減大人なんだから、しっかりしなさい”って言われたり、反対に子供扱いされたりするじゃないですか。
ーーええ、人生で一番矛盾を感じていた時期でした、私も(笑)。
人時:そこから大人になっていくわけですけど、やっぱりガキなんですよね、特に男子は。50歳になっても60歳になってもガキだなって思うし(笑)。女性からガキっぽく見えてるんだろうなって思うんです。
ーーそうかも(笑)。
人時:僕自身、40目前にして子供っぽい部分も持っているんで、恥ずかしながら(笑)。大人になりきれない部分もあるけれど、大人として周りからは認められてる状態でもある。その揺れ動いてる心情を音でも出したかったっていうか。それでベタなバラードにありがちな綺麗なコード進行も、敢えて音を歪ませて潰してみたり(笑)。
ーー大人げなく(笑)。
人時:大人げなく(笑)。ローファイっていうか、古くさい'60年代の音みたいに、ちょっと歪んでいるイメージで。汚い音なんだけど(笑)、今はそれが新鮮だと思うんですよね。Death-Oくんがカフォンを叩いてくれて、よりいい感じに大人げなく仕上がったなと思います。

<Interview:Kimico Masubuchi>

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いかがでしたでしょうか?
包み隠さず何でも話してくださった人時さんに感謝です。

このインタビューの後編は明日、0:00〜、本ブログにアップいたします。
どうぞ、お楽しみに。



☆人時さんのオフィシャル・ウエヴ・サイト☆
【 http://sound.jp/hitokiss/